個人再生
コラム

主債務者が個人再生をした場合の連帯保証人に対する影響

弁護士の櫻田です。

借金をする際,親族や知人に連帯保証人になってもらうことがあります。

しかし,主債務者において,借金の返済が困難になり,個人再生をした場合,連帯保証人にはどのような影響があるのでしょうか?

主債務者が個人再生をして再生計画が認可されると,借金が大幅に減額されることになりますが,連帯保証人の支払義務も減免されることになるのでしょうか?

今回は,個人再生をした場合の連帯保証人に対する影響について説明します。

主債務者が個人再生をしても連帯保証人の債務は減額されない!

まず結論から申し上げると,主債務者が個人再生をして借金が減免されたとしても,法律上は,その減免の効果は連帯保証人には及びません

この点,民事再生法177条2項に規定がありますので,引用します。

民事訴訟法177条2項(一部省略)
再生計画は,…再生債権者が再生債務者の保証人その他再生債務者と共に債務を負担する者に対して有する権利…に影響を及ぼさない。

このように,主債務者が個人再生をしても,連帯保証人の債務が減ることはありません。

そして,主債務者が個人再生をする場合,弁護士に依頼をした時点で支払いを停止しますので,その借金について連帯保証人がいれば,債権者は,連帯保証人に対して請求をすることになります。

この場合,主債務者の債務不履行により既に期限の利益が喪失しているので,契約上,連帯保証人は,連帯保証債務の履行を求められ,借金残額の一括返済を請求されることになります

主債務者が個人再生をした場合の連帯保証人の対応

しかし,連帯保証をした借金の金額が高額の場合,連帯保証人としては,債権者から一括返済を請求されても支払えないことが多いはずです。

一括返済が難しい場合,連帯保証人としては,まず,債権者と交渉をして,分割での返済を認めてもらう必要があります。

具体的な返済方法ですが,主債務者が契約上元々支払っていた金額と同じ条件で分割返済をするというのが一般的だと思います。

この方法であれば,債権者としても,元々の契約通りに想定された金額が支払われることになり,現実的な債権回収の観点からは不利益が少ないといえるので,門前払いで拒絶されることも少ないでしょう。

なお,仮に,連帯保証人に支払能力があり一括返済をした場合,それが主債務者の個人再生前であれば,主債務者の個人再生手続において,再生債権者として届出をすることで,減額された金額での求償(返済)を受けることができます

連帯保証人の具体的な返済内容(主債務者の再生計画との関係)

では,連帯保証人は,総額でいくら返済すればいいのでしょうか?主債務者が個人再生をした場合,主債務者も再生計画に基づき債権者に返済をしていくことになるので,両者の関係が問題になります。

この点,話が少々複雑になるので,具体的な事例を挙げて説明します。

<事例>
・主債務者AはB社に対して1000万円の借金があった。
・連帯保証人CはAのB社に対する借金を連帯保証した。
・AはB社に対して毎月10万円ずつ返済をしていたが,残額500万円となった時点で返済困難となった。
・CはB社から連帯保証債務の履行として残額500万円を一括請求された。
・Aは個人再生をしてB社に対する借金が100万円に減免された。

上記の事例で,Cは,B社から500万円の一括請求をされていますが,一括返済が難しければ,まずは,例えば,Aが返済していたように,毎月10万円ずつ分割で返済する(50回の分割払い)などの内容で分割返済の交渉をすることになるでしょう。

その上で,Aは,再生計画に基づき,B社に対して,100万円の返済をしていくことになります。再生計画の期間が3年であれば,通常,36回払いで毎月約28,000円ずつ返済をしていくことになります。

とすると,CはB社から500万円を請求されていますが,Aが再生計画に基づきB社に対して100万円を返済した場合は,Cとしては,残りの400万円を支払えばいいことになります。

しかしながら,前述したとおり,Aの個人再生による効果はCには及びませんので,法的に,Cの連帯保証人としての返済額が400万円に減るわけではないので注意が必要です。Cとしてはあくまで500万円を支払う義務があるのですが,Aの返済額と合わせて総返済額が500万円に達すれば,Cの支払義務も終了するということにすぎないのです。

少々難しい話になりますが,AとCのB社に対する返済は同時並行で行われることになるので,AとCの返済開始時期が同じだと仮定すると,Aは3年(36回払い)で総額100万円を,Cは4年2ヶ月(50回払い)で総額500万円をB社に返済することになります。

この場合,3年経過時に,B社は,Aから100万円の,Cから360万円の,合計460万円の返済を受けていることになります。とすれば,Cは,あと4回10万円ずつ合計40万円を支払えばいいことになり,4年2ヶ月より早く,3年4ヶ月で返済が終了になるのです。
結果としては,Aが100万円,Cが400万円を負担する形になるのです。

連帯保証人は主債務者に対して求償することはできない

上記の事例では,連帯保証人Cは400万円もの支払いをしているので,この分を主債務者Aに対して求償する(返済を求める)ことを検討したいところです。

しかし,この場合,残念ながら,連帯保証人は主債務者に求償することはできません

主債務者は,再生計画の認可を受けたことにより,債務の減額が確定しています。
仮に,主債務者が連帯保証人に求償しなければならないとすると,主債務者としては個人再生をした意味がなくなってしまいます。

連帯保証人に支払能力がない場合は債務整理の検討を

上記は,連帯保証人に少なくとも分割返済をする資力がある場合を想定してきましたが,場合によっては,分割返済すらできない状況も考えられるところです。

この場合は,連帯保証人自身も,任意整理,個人再生,自己破産などの債務整理をすることを検討しなければなりません

今回は以上です。
連帯保証人は,主債務者と同じ責任を負担することになります。
連帯保証人になる場合は,それこそ自分が全額返済をしていく覚悟が必要になるでしょう。
主債務者が個人再生をした場合も同様で,連帯保証人の責任は重いです。